【読書】少年アリス 改造版

「少年アリス」に改稿した「改造版」なるものが存在すると知り、さっそく書店に探しに行きました。そうしたら他にもたくさんの単行本が並んでいて、思わずいろいろ買ってきてしまいました。

さて、少年アリスの改造版ですが、単行本にはご本人がなぜこの改造版に着手したのかを書いた文章が付属していました。

あの独特の肌触りのある漢字+ルビを散りばめた文章は中身がないことを繕うためのものだったということに気づいた、というようなことが書かれていました。なるほど作者自身のそういう感覚はわからなくもありません。

ただ、読み比べてみて、ことさら以前のものが悪いようには感じませんでした。むしろ、どちらが好きかと言われたら、私は以前のもの(現在文庫で読める方)のほうが好きだと答えるでしょう。

両者を比較すると、作者がどのような意図をもってこの改造を行ったのかが垣間見えます。全体的にすっきりとした文体に直されていて、目に慣れない漢字表記を過剰に詰め込んだスタイルとは全く違うシンプルな表現に徹しています。文字使いだけでなく、持って回ったような文体もサクサクと進むものに直されており、内容そのものにも大きく手が入れられています。

どちらが良い悪いという議論以前に、そもそも過去の作品に手を入れるという行為そのものに対しても賛否は分かれるところでしょう。しかしどちらが好きかという点も含め、読み込むほどに感じることの多い作品です。

私にとっては、この改造版を読んだことによって「少年アリス」という作品がより深いものになったと言えそうです。まだ改造版は買ってきたばかりなのですが、すでに旧版も含めて何度も読み返しました。私には旧版で説明されていない部分は「説明不足」ではなく「表現の余白」のように思えます。改造版ではしっかり話が通るように組み立てられていますが、その分解釈の余地が減ったように感じるのです。旧版は文体こそ装飾の施されたものかもしれませんが、全体としてはあっさりした描写で描かれていて、出来事の一つ一つを取ってみてもどこまでが現実なのかよくわからない状態になっています。それは曖昧さなのかもしれませんが、決してその曖昧さはマイナスではないと思いました。

今のところ、私は改造版よりも以前のもののほうが好きですが、改造版が無ければ気づかなかったようなことに気づくことができました。それに、読み比べることで長野さんご自身が以前の「少年アリス」にどのような不足を感じたのか、ということが垣間見られるのも貴重です。

それ以上に、この本を買いに行った書店でほかのいろいろな作品にも出会うことができました。この改造版がくれた機会は大変大きなものだったと言えます。

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長野まゆみさんにどっぷり

書籍との偶然の出会いというのはほんのりと胸の奥が温かくなるような喜びをくれます。

僕は以前から歌手で声優の坂本真綾さんの大ファンですが、真綾さんのアルバムに「少年アリス」というのがあって、この作品が僕は特に好きなのであります。

先日、映画を見るのに少し時間が空き、書店であてどなく時間をつぶしていたら、文庫のコーナーで背表紙に佇む「少年アリス」の文字が目に飛び込んできました。長野まゆみさんの小説「少年アリス」です。

あまりにも今更で大変恥ずかしいのですが、わたくし、実にこの瞬間まで長野まゆみさんのことを全く存じ上げませんでした。坂本真綾さんの「少年アリス」はいわゆるヘビーローテーション状態で聞き耽るほど好きなのですが、同名の小説が存在することは全く知りませんでした。

迷わず手に取り、購入しました。

映画を見るまでの暇つぶしとして書店に行ったのですが、早く映画を見終えて読み始めたいと思い始めていました。

映画を見終え、帰りの電車で読み始めたのですが、最初の数行でもうはまりました。なぜこれを今まで知らなかったのかと思うほどど真ん中に突き刺さり、一気に惹きこまれました。

映画はレイトショーだったので帰宅したのは夜もだいぶ遅い時間でしたが、さっさと風呂に入り、上がってからも読み耽り、一息におしまいまで読み切ってしまいました。

翌日、再び書店に行って文庫を何冊か買ってきました。

もともと好きだった稲垣足穂や宮沢賢治のような耽美的な世界が広がるその作風が心地よく、時間を忘れて耽ってしまいます。アリスが導いてくれた出会いに感謝です。

こちらは真綾さんの「少年アリス」。長野まゆみさんのアリスと共通点があるとすれば、それは「あやうさ」ではないかと感じます。なるほど少年というのはあやういものなのだなということを改めて感じさせられますね。かつて少年だったはずの私はしかし、こうした美しさを伴うあやうさではなく、もっと攻撃的で破滅的なあやうさを伴っていたように思います。